資格が可能性を狭めるケースについて
「就職に有利だから資格を取れ」
そう言う人もいると思います。たしかに、自動車の運転を伴う仕事は運転免許なしにはできませんし、特定の資格(危険物取扱者資格、宅建など)のある人しか就けない職業もあります。
一方で、TOEICやTOEFLのように、あれば能力を認められるがそれ自体は職業の資格を示さないものの存在も無視できません。TOEICのスコアがないけれど英語がペラペラの人と、TOEICのスコアを持っていて英語を喋るのが苦手な人であれば、後者の方が信頼できる人材のはずです。こう考えると、資格は就職に有利だと思えます。
ところが、資格が不利に働くケースもあることを忘れてはいけません。つまり、別のことをしたいのに資格が邪魔をするという場合です。あなたの資格が恣意的に受け取られ、利用されてしまう可能性もあるのです。
資格は思い通りにならない
資格で決めつけられる
学歴は配属に影響を与えます。特に、ICU(国際基督教大学)などの英語に関する特色がある大学の出身者は注意が必要です。塾講師のアルバイトで苦手な英語の授業を任されたとか、デザインに興味があって入社したのに通訳をさせられたという話も聞きます。彼らは他に興味のあること、好きなことがあるのに、英語というイメージがあるだけでそれを否定されてしまいます。
このように、資格は言葉よりも多くのことを説明してしまうのです。どんなに国語が好きでも英語に関する資格を持っていれば「英語を話したい人」とみなされ、どんなにデザインに関する熱意を持っていても英語が話せる貴重な人材として営業に回されます。資格を主張しすぎるのはよくないことなのかもしれません。
資格取得は時間がかかる
資格は思い通りに取得できるものではありません。たしかに、資格試験の中には毎月のようにやっていて、望めばすぐ受けられるものもあります。しかし、どんな試験でも勉強は必要です。それこそ、英語が得意な人であれば英語の試験でそこそこのスコアは取れるでしょう。でも、漢字が得意だから明日すぐに漢検を受けても大丈夫とか、プログラミングができるので基本情報技術者試験をいつでも受けられるという人はあまりいないと思います。
そもそも、明日すぐ受けられる資格なんて、誰でも取れます。人事が相当の世間知らずでもない限り、その名前に騙されることはないでしょう。資格試験の多くが3ヶ月から半年に1回程度しか試験を設けていないのは、しっかり勉強してほしいという願いがあってのことです。無勉強の丸腰で挑むことのないようにしたいですね。
資格を思い通りにする
主張する資格を変える
たしかに資格があることで可能性が狭められる場合はありますが、場合によっては、資格をコントロールすることができます。例えば、就活のテクニックのひとつに、企業ごとにエントリーシートの内容を微妙に変えるというものがあります。
例を挙げるとすれば、ボールペン字講座の資格はどこに行っても通用するでしょう。しかし、BtoBの営業をやりたい企業で宅建の資格を提示すれば、不動産部門に配属される可能性が否定できません。NOT A BUT B(AではなくB)ということは説明しづらいので、ここでは宅建の資格を主張しない方がよいでしょう。
同様に、恣意的に利用されたくない資格は主張しない方が吉です。バイトなどでもの小さな現場では、いいように使われてしまいますから。
多彩・多才であることをアピールする
でも、冒頭に挙げた英語系大学の場合、学歴を提示せざるを得ません。そこで、英語をONE OF THEM(技能のひとつに過ぎない)と思わせることを考えます。つまり、英語に関係ない資格をたくさんとって、「英語だけじゃないんだぞ」ということをアピールするのです。
それこそ、この世には取るに足らない資格なんてたくさんありますし、頑張れば誰でも取れる資格だってあります。将来、英語だけの人になりたくなければ、英語以外の資格も取ることをお勧めします。
やりたいことをアピールする
以前、ウェブデザインの会社を受けた際、かつて(個人サイト時代に)HTMLを使っていたということをアピールしました。しかし、これは有効なアピールになりません。どれだけ得意か、どれだけ勉強しているかわからないからです。「昔やっていたので、勉強し直して資格を取りました」ぐらいでないと、熱意の証拠にならないと思います。
これは業界研究にも同じことが言えますが、「採用ウェブサイトをさらっと見ました」程度では業界を知ったことにはなりません。目指している企業や業界があるのなら、その企業が取り上げられている雑誌や新聞の記事なり、業界誌なりを読み込みましょう。きちんと勉強した方が熱意は伝わるはずです。
人手不足だからこそ注意
このように、資格は不利に働くケースがあり、そうならないためにもコントロールが必要です。人手不足だからこそ、相手は恣意的に利用できる人材を求めているので、気をつけましょう。「英語を話す機械」にされてはいけません。