配慮は押し付けるものじゃない 自分でするものだよ
女性の化粧に関する不適切な広告や、下着や身だしなみに関する不適切な校則が話題になっています。高校生までは生活指導部がうるさくルール違反を糾弾してきますが、大学以降はそうではありません。服装に関する規範はあくまでマナーやエチケットであって、ルールを執行する組織はありません。あるとすれば、世間です。
いずれにしても、高校を出た後、あるいは受験期にあなたが気にすべきなのは、「他人から見て」自分がOKなのかNGなのかです。具体的な基準はありませんから、あなたが正しいと思った服装を心がけるしかありません。もちろん、かしこまった場以外では、礼儀正しい服装は求められませんから、あなたの自由にして構いません。ただし、配慮は必要になってきますから、気を付けましょう。
大学入試までの服装
大学に入学するまでは、制服で外出する機会も増えていきます。オープンキャンパスや学園祭には制服で行く必要がありませんが、制服で行くことで思わぬメリットがある場合もあります*1。一方で、制服で行けば、あなたには責任が生じます。あなたはふさわしい格好でなければならないのです。もちろん、入試の面接など、直接的な交流がある場合は、服装により一層の配慮が必要です。細かい部分に配慮しないと、あなただけではなく、高校の名誉にも傷がつきます。制服の重さを知ってください。
人の目につく部分
そもそも人間には、どうしても注視してしまう部分があります。誰しもそうとは言い切れませんが、男性は顔や胸元、女性は手元・足元などの細かい部分を見る傾向があるようです*2。
つまり、服装について考えるときは、まず、こうした部分に気を使った方が良さそうです。もう終わっているとは思いますが、入試の面接をする際は、制服の胸元(ネクタイやリボンなど)と手元(ボタンの開閉や袖の位置など)、足元(靴が磨かれているか、ゴミがついていないか)に気をつければよいでしょう。
制服は代表の証
制服を着ているあなたは、◯◯高等学校・◯◯中等教育学校の代表です。オープンキャンパスや大学見学に制服で来た場合、あるいは面接を受ける場合は、あなただけで◯◯高校の印象が決まります。尤も、あなたが何高校の生徒か知らない人は、近頃の高校生(の代表)という、より大きい単位で見てくるでしょう。◯◯高校の、あるいは高校生全体の未来は、あなたにかかっているわけです。あなたがしている行動以上に、あなたの服装が目につきますから、高校の先生の目がないからといって、着崩したり、だらしなくしたりするのはまずいです。
中には、第二制服や別の着こなしパターンがある高校もあるかもしれません。しかし、面接や試験、大学見学の場合、いくらリラックスしたムードとは言え、ある程度の規律・礼儀正しさが求められます。こうした場にはなるべく第一制服で参加し、トレーナーやパーカーなどのオプションパーツは避けましょう。(指定品ではない異装のセーター・ベストなども避けてください。) 代表として恥ずかしくない服装を心がけてください。
私服特有の配慮
大学生活では、高校までと違い私服ですから、もっと別の配慮が求められます。ただし、必要とは言っていません。多くの大学ではホームクラスはありませんから、あなたに対して「同じ授業を受けている人A」という程度の認識しか持ちません。クラスがある大学でも、高校のように風紀が重視されるわけではなく、罰されるわけでもありません。
さて、求められる配慮というのは、だらしなさに対する自制です。今(執筆当時)は秋口ですからそういうことはないと思いますが、夏場は胸元や足元に注意が必要になります。見た目のだらしなさは、(特に異性に)不快感を与えたり、(ディスカッションを伴う授業等で)集中を削いだりする可能性があります。
繰り返しますが、だらしない服装で授業に臨むことは禁じられてはいません。キャンパスの中に寮がある大学では、寮生がスウェットなどのだらしない服装で授業に出る場合もあります。多くの授業にはドレスコードがありませんから、スウェットで授業に出てペナルティを受けることはありません。
身だしなみに関する規則はない
もっと言えば、無理をして化粧をしてくる必要もありません。高校までは化粧をして来るなと言われているのに、大学からいきなり求めてくるのはおかしいと思います。髭も同様で、大学には髭の濃さに関するルールもありません。周りに思い切り髭を生やしている人もいました。
こうした身だしなみはあくまで本人の自由のはずです。もちろん、服装のせいでだらしないと思う人・思われる人もいるとは思います。しかし、整った服装で授業に臨むことはエチケットであって、規則ではないのです。
リラックス=リスク
ただし、だらしない服装をすることはリスクにつながるはずです。まず、大学が必ずしも安全な空間ではないことは、昨今の報道で薄々感づいている人も多いでしょう。週刊誌報道ほどの極端な例は見たことがありませんが、男性優位の大学には女性にとって危ない部分もあるようです。
どちらにしろ、相手の服装のだらしなさを理由に性的暴力を正当化する人に対しては、擁護のしようがありません。最低です。話を戻しますが、服装を整えて隙を見せないことは自己防衛の手段のひとつです。だらしなさや隙を狙われる犯罪は性犯罪だけではないので、誰にでも当てはまることだと思います。
次に、場面に応じて気を引き締める必要があります。もちろん、教員によっては「リラックスして聞いてください」という場合もありますが、例えば、◯◯国駐日大使や××研究所所長が講演に見えている際に、だらしない格好はできないはずです。講義の種類や教員の態度によって、気の抜き具合を調整しましょう。
派手さは悪くない
派手であることを禁止する規則はありません。中には、バンドマンなどで通常では使用しない色のヘアカラーをしていたり、あるいは、留学生や外国文化との接触が長い人で入れ墨やピアスをしている人がいるかもしれません。これらは禁止されていることではなく、一部の人が勝手に悪いものだと決めつけているだけです。
自分がそれをするかはあなたの価値観に委ねられますが、他の人にまでその価値観を押し付けてはいけません。中には、宗教的な装束など、本来身につけるべきものがあるのに、差別を恐れて身につけられないという人もいると思います。大学は様々な人が多様な学問に志す場ですから、他と違うからといって冷たい視線を向けるのは避けたいものです。
身につけてはいけないもの
大学で身につけてはいけないというものは、ほとんどありません。あるとすれば、音の鳴るものです。大学では図書館をはじめとして、静粛を求められる場が多くあります。鈴のついたストラップやキーホルダー、あるいはマジックテープ式のカバンなどは、耳に障りますから、大学での使用には適しません。
それから、高校までと違い、学内での携帯電話の使用が許可されています。しかし、マナーモードに設定しておかないと迷惑です。公共交通機関を使う文化圏にいなかった人には馴染みがないかもしれませんが、公共の場所ではマナーモードが基本です。教室や図書館で悪びれずに着信音を鳴らしている人もいますが、集中を削ぎますし、不快感を覚える人もいるので、マナーモードのマナーは確実に守ってください*3。
配慮は押し付けるものではない
見てきたように、服装に対する配慮はいかなる時も求められてきます。しかし、自分の基準を他人に当てはめたり、押し付けたりするのは褒められたことではありません。世の中に様々な視点があることを認め、受け入れましょう。あなたや「日本社会」の基準が正しいとは限らないのです。
*1:同じ高校出身の先輩に気づいてもらえるなど
*2:狩猟採集をしていた時代の名残でそうなっていると考えているのだ、と考えている学者もいます。How is vision different for men & women? - Eye & Vision - Sharecare