明らかになる巧妙な手口
コンサートのチケットをめぐるなりすましと詐欺の事件。
ネットを使う上で重要な問題ですが、報道のネット記事にはわかりづらいものもありました。
そこで、自分なりに事件をまとめてみます。
今回の事件は、メディアによっては、犯人の少女が女性になりすましたという事実だけが切り取られていて、ただ単に警察が間抜けだったかのように印象操作されています。
しかし、事件の詳細を調べてみると、かの遠隔操作ウイルス事件にも似た巧妙な手口が使われていることがわかりました。
冤罪(えんざい)被害にあった女性Aの口座情報を不正に入手して、詐欺を行っていたというのが、この事件の実態。
女性Aが詐欺を行なっているように装い、罪をなすりつけたのです。
おことわり
手口を解説したら、悪用されるのではないかという意見があるでしょう。
ですが、なりすましや詐欺の手口を知らずに被害にあうよりはマシだと思います。
記事の最後には、ネットを使う際に気をつけたいこともまとめてあるので、被害にあわないための方法として読んでいただきたいです。
口座情報を得た方法(冤罪)
チケット取引サイトに出品した女性Aと交渉をする。その際に口座情報を知る。
少女はこの時点でチケット代を持っていなかったので、ある意味でこれも詐欺といえます。
しかし、後述する通り、チケット代は支払われています。どのように、チケット代を工面したのでしょうか?
チケット代を工面した方法(詐欺)
- 少女はネット上で女性Aになりすます*1。
- チケットが余っているとうそをつき、別の女性B-Dとやりとりをする。
- BとC(詐欺の被害者)には女性Aの口座に振り込ませる。
- 少女は、Dのみからお金をもらい、AにDの住所を教える。Dにはチケットが届く。
- BとCはチケットを受け取れない。BとCは詐欺に気づき、警察に通報。
- Aに詐欺の容疑がかかり、真犯人の少女は警察の目をかいくぐった。
なぜバレなかったのか
警察
表面上は、女性Aが女性B-Cからチケットを詐取したようにしか見えない。
しっかりした捜査官であれば、女性Aのスマートフォンやパソコン、あるいはサイト側のログを調べるなどの裏付けを行っていたでしょう。
しかし、捜査に当たった徳島県警は表層だけに気をとられ、なりすましを見逃していました。
女性A
女性Aはお金ももらっているし、Dにチケットも送ったので、冤罪に巻き込まれたとは気づかない。
無実の罪で誤認逮捕され、19日間拘留されたこの事件の最大の被害者です。
なぜバレたのか
- 処分保留で釈放された*2女性Aは、郵便局でチケットを送った記録を確かめる。
- チケットを送った先と詐欺の被害者が同じではないことが判明する。
- 取引サイトのログを調べると、女性Aが詐欺に関わっていないことが確定した。
本当に悪いのはネット犯罪
冤罪被害にあった女性にとっては大変な災難でしたが、諦めずに無実を証明しようとした姿勢に敬意を表したいです。
徳島県警・徳島地検の捜査にも不備はありましたが、犯人の手口も相当のものでした。
全国の警察は高度化するネット犯罪に対処する力を、早急につける必要があります。
その一方で、女性Aに罪をなすりつけた犯罪者に最も大きな問題があることを忘れてはなりません。
警察の無能さを非難するのもよいですが、私たちは個人情報を悪用したネット犯罪をなくす方法、被害にあわない方法も同時に考える必要があります。
参考
ニュース動画
(テレビ朝日のニュース動画では、犯行の手口が詳細に解説されていました。
ただし、あたかも県警が自力で誤認逮捕に気づいたかのように述べられているので、100%正確ではありません。)
ネット上で気をつけること
さて、今回の事件は、ネットで個人情報を明かしてしまったから起きたことです。
私たちは日頃から自分の個人情報を守るために、用心する必要があります。
例えば、
- チケットを取引しない。最近では、販売店から購入した本人以外の入場を禁じているイベントもある。
- ネット上の個人間で取引する場合は、個人情報を教えない方法にする。例えば、メルカリでは、相手に住所を知られずに、荷物をやりとりすることができる。
- SNSでは取引をしない。取引をする際は、信頼できるネットサービスを使う。取引用に用意されたアカウント(捨て垢・取引垢)とはやりとりしない(履歴などを確認)。
- 匿名制のネットサービスで本名と思しき名前のアカウントに絡まれた場合は、無視する。
- 実名制SNSでは、本名や友人の名前、顔写真などが友達以外から見えないように設定する。別のSNSや出会い系サイトでなりすまされる恐れがある*3。
個人情報を出して自滅してしまうことは、どんな優秀なセキュリティ対策ソフトでも防げません。日頃から一人ひとりが注意しておく必要のある問題なのです。*1:女性のアカウントを乗っ取ったわけではなく、おそらく女性名義でアカウントを新設した。
*2:証拠が不十分で、事実と供述にも食い違いがあった。 なりすまし誤認逮捕、「ネット犯罪の知識不足」 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
*3:私の実体験ですが、友人の名前で私に「友達申請」が来たことがあります。すでにその友人とは「友達」であるため、不審に思って本人に問い合わせると、なりすましだとわかりました。
仮におすすめユーザーとして表示されて、自分の友人が「友達」になっていても、全員がだまされている可能性があります。友人が新しくSNSに参加したら、本人に確認しましょう。